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ペンギン

(このアルバムはお父さんの1st)

 

 たった一人でアンコールに登場したアーサーは、ちょうど20年前に私の父は亡くなったんだよ、と決して流暢ではない語り口で我々オーディエンスに告げると、おもむろにグランドピアノを弾き始める。そのあまりにシンプルなピアノソロからは、イマジネーションがみるみるうちに湧き上がるのをそこにいた全員が目撃した。それまでの演奏があまりに豊かな響きだったせいだろうか。

 

 その数分の間、4年前のこの日にあの世へ行った親父のことが蘇る。彼のおかげで今年はこの日が親父の命日であることを改めて思い出して、そして想いを馳せることが出来た。これも何かの縁かもしれない。

 

 懐かしくて優しい、新しくて情熱的、さらりとしていて尊い、適当なようで一切適当でない、こんなに心地の良い音楽を俺は聴いたことがない。本当言うと、気持ち良すぎて少々退屈で、ひょっとしたら寝てしまうのではないか、そう思っていた。CDの印象からして・・・。でもそれはまるで間違いだった。退屈している暇なんてなかったし、次の展開に始終ワクワクと興奮する自分がいた。それでいてどんどん気持ちが研ぎ澄まされていくような、そんな不思議な感覚を持った。

 

 

 そう、それは普段の空に妙に美しい空を発見して、しばし見とれてしまうような、そういう感覚なのかもしれない。(先日、散歩していてふと思ったけれど、困ったら、時には空を見上げてみればいい)あまりに不思議な感覚に浸ったからか、昨夜は夜中に目が覚めて味わったことのないなんとも言えない胸騒ぎが溢れるのを感じた。あれは実にヤバかったけれど、朝になるとあれは名残だけを残してどこかに霧散していたから、ほっと胸をなでおろす俺だった。

 

 幸せなあの場に居合わせていなくて、生で彼らの音楽を聴けなかったのなら、仕方がないのでCDを聴いてみたらいかがだろう。その感覚にいくらかは触れることが出来ると思う。夕べまでは俺もそうだったから。

 

(これが息子の1st)

 

 そうだ、ペンギンをルアーに描いてみたらどうだろう。もしくはペンギンのルアーを作るか。

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